世界の珍しい料理10選と面白い歴史
留学生の方にとっても、なにげなく食べていた現地の食事を深く知るチャンスです。
世界10の珍しい食文化
世界には本当に珍しい料理や食材、食文化が存在します。食事は文化の大きな一部であり、その起源や歴史を知ることで、その文化をより深く理解することができます。今回紹介する10個のユニークな世界の料理にも興味深い歴史背景があります。
1. キムチ:韓国
食品の特徴
キムチは、発酵させた野菜(主に白菜や大根)を用いた韓国の代表的な料理です。辛味や酸味が特徴的で、様々な種類があります。キムチはもちろん日本でも人気がありますが、韓国で味わえるキムチと日本で販売されているものは、少し味わいが異なるようです。
文化的背景
キムチの歴史は約4000年前にさかのぼります。当初は野菜の塩漬けとして始まり、沈菜(チムチェ)と呼ばれていました。現在のような赤い辛いキムチが登場したのは比較的新しく、16世紀に日本から唐辛子が伝わり、18世紀から本格的に使用されるようになってからです。
キムチの発展には、以下の要因が関与しています。
- 農耕文化と野菜好きの国民性
- 優れた水産物の塩蔵技術
- 白菜の広範な栽培と普及
キムチは栄養面でも非常に優れた食品です。主材料の野菜には豊富なビタミンが含まれ、発酵過程で新たなビタミンも生成されます。また、乳酸菌による整腸作用や消化促進効果も期待できます。韓国人の肌がきれいなのはキムチをよく食べるからだという噂も聞いたことがありますよね。
キムチは韓国の食卓になくてはならない存在であり、家庭ごとにレシピが異なるため、家族の絆を深める重要な役割を果たしています。特に「キムジャン」と呼ばれる冬に向けて大量のキムチを漬ける韓国の伝統行事では、家族や友人が集まり、一緒に作業をすることでコミュニティの絆が強まります。「キムジャン」は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。現代では、キムチ専用冷蔵庫が一般家庭に普及するなど、キムチは韓国人の生活に深く根付いています。
2. フィッシュアンドチップス:イギリス
食品の特徴
フィッシュアンドチップスは、揚げた白身魚とフライドポテトからなるイギリスの伝統的なファーストフードです。
特にロンドンでは、ストリートフードとして広く親しまれています。食べる際には新聞紙で包まれて提供されることが多く、カジュアルな食事スタイルとして愛されています。フィッシュアンドチップスはイギリスのアイデンティティを象徴するものとも言えるでしょう。
また、チップスと聞くと日本ではポテトチップスのようなものを想像される方が多いと思いますが、イギリスではフライドポテトを指します。(アメリカではフレンチフライ。)イギリスでポテトチップスはクリスプスと呼びます。
文化的背景
フィッシュアンドチップスは、イギリスの伝統的なファストフードとして知られていますが、その歴史は意外にも新しく、19世紀後半から始まりました。1860年、ロンドンの下町イーストエンドで、ユダヤ人移民のジョセフ・マリンが最初のフィッシュアンドチップス店を開いたとされています。
この料理の誕生には、産業革命が大きく関わっています。鉄道網の整備と蒸気船の登場により、大都市への鮮魚の迅速な輸送が可能になりました。さらに、1880年代に導入されたトロール漁業によって大量の魚を獲れるようになり、冷凍技術も発達したことで、フィッシュアンドチップスは更に広まりました。
フィッシュアンドチップスは、安価で腹持ちが良く手軽食べられることから、産業革命期の労働者たちに広く受け入れられました。20世紀初頭には、ロンドンだけで約1200軒のフィッシュアンドチップス店が存在していたといいます。
この料理は「庶民の憩いの場」の一部として機能し、地域コミュニティの中心的な役割を果たしてきました。現在は、食文化の多様化や地域コミュニティの変化に直面していますが、一方でフィッシュアンドチップスなど伝統的な食文化を守るための取り組みも活発化しています。その一環として様々なコンクールが開催されており、コンクールで入賞することは大衆文化における一種のステータスとなっています。こういったコンテストでは、味だけではなく環境への配慮やメニューのこだわり、アレルギーへの対応サービス、お店の衛生状態やマーケティングなども総合的に審査されています。覆面調査員によるサービスチェックも行われているようです。
フィッシュ・アンド・チップスを揚げた後に出る廃油は、バイオディーゼル燃料として再利用されているそうですよ。
3. ハギス:スコットランド
食品の特徴
ハギスはスコットランドの伝統的な料理で、羊の内臓(心臓、肝臓、肺)をオートミールや香辛料と混ぜ、羊の胃袋に詰めて煮込んだスコットランド伝統の料理です。ハギスはスコットランド文化を象徴する料理として、多くの人々から愛されています。
文化的背景
この料理は、特に1月25日【ロバート・バーンズの日】に特別な意味を持ちます。この日はスコットランドの詩人ロバート・バーンズを称える日で、多くの人々が集まりハギスを食べながら彼の詩「Address to a Haggis(ハギスに捧げる詩)」を朗読します。この日はバーンズ自身の誕生日でもあり、彼の死後、彼の友人たちが1月25日にハギスを食べながら彼の詩を読んだことからこの文化の始まったと言われています。
ハギスの起源は謎が多く、明らかになっていない情報ばかりです。少なくとも15世紀には存在していたと考えられており、元々は貧しい人々が余った食材を利用して作ったものであると言われています。内臓や穀物を無駄なく活用し栄養を摂取する知恵が反映されているのですね。
現在では高級レストランでも提供されることがあり、その調理法や盛り付け方も洗練されつつあります。ハギスは通常、マッシュポテト(ターヴィー)やナパ(煮た根菜)と一緒に提供されます。また、スコッチウイスキーと共に楽しむことが多く、その風味が料理と絶妙に合うのだそうです。ハギスはこってりとした味だそうで、ハーブやスパイスをたっぷり効かせて、スコッチなどで煮込みます。その見た目から少しグロテスクだと感じられる方も多く、「スコットランドの山奥に住む『ハギス』っていう不思議な動物のお肉」と子供に説明をするご家庭も多いのだそう。
ちなみに日本人は、ハギスを美味しいと感じる方があまり多くないようです。お店によって当たりハズレがあるらしく、新鮮な食材を取り扱っているお店でトライすることをおすすめします!
4. バルート(バロット):フィリピン
食品の特徴
バルート(Balut)は、フィリピンの伝統的なストリートフードで、孵化直前のアヒルの卵を茹でたものです。その中にはほぼ成長した雛が入っており、多くの場合、ビールと一緒に楽しむことが一般的です。バルートは「勇気を試す食べ物」として知られ、新しいことへの挑戦精神を試すという意味があります。
文化的背景
その起源は中国にあるとされ、1885年頃に中国人がフィリピンに持ち込みました。中国人が近代的な冷蔵庫が登場する前に、卵を日持ちさせる方法としてこの料理を開発したことが始まりです。
バルートの製造過程は非常に興味深いものです。まず受精卵を約16日間ほど37℃の保育器に入れ温めます。その後、卵を茹でて胚が完全に形成される前に食べられます。
中国では「毛蛋マオダン」と呼び、これは「羽の生えた卵」このという意味です。中に入っているアヒルに羽毛が生えていることに由来するといいます。もちろんこれは孵化がどこまで進んでいるかによって羽毛があるかどうかは変わります。
バルートは通常、屋台や通りで販売されており、多くの場合夜間や夕方に見かけます。この料理はフィリピンの庶民文化の重要な一部となっています。
バルートは非常に栄養価が高く、タンパク質やビタミンが豊富で滋養強壮に良いとされています。
バルートはフィリピンだけでなく、ベトナム、カンボジアなど、東南アジアの広い地域で類似した料理を見ることができます。これは、食文化の伝播と各地域で独自の発展を示す良い例といえるでしょう。
5. コピ・ルアク:インドネシア
食品の特徴
コピ・ルアクはジャコウネコ科パームシベット属のパームシベットの糞から採られる未消化のコーヒー豆のことで、高級コーヒーとされています。
インドネシアのコーヒー農園で栽培されるコーヒーの木の果実は、野生のジャコウネコに食べられます。果肉は栄養源となり消火され吸収されますが、種子のコーヒー豆は消化されずにそのままの形で排泄されます。その排泄物からコーヒー豆を取り出し、きれいに洗浄してよく乾燥させた後、焙煎したものがコピ・ルアクです。なぜネコのお腹に一度入ったものでなくてはならないのか疑問に思われる方も多いと思います。それは、ジャコウネコの腸内に存在する消化酵素の働きや腸内細菌による発酵の働きが関係していると言われています。これらによってコーヒーに独特の香味や風味が加わるのだそうです。ちなみに、この消化器官を通る過程でカフェイン含有量は、通常のコーヒーの半分くらいになることが分かっています。
文化的背景
インドネシアは今はコーヒーの原産地としてとても有名ですが、実は、オランダに植民地化される前まではコーヒーの木はインドネシアに生えていませんでした。18世紀オランダの植民地時代に、オランダ人がインドネシア人の安い労働力でコーヒーの栽培をしようとしてインドネシアに持ち込んだのが始まりです。
そのため、植民地時代に多くの農地がコーヒー栽培に切り替えさせられたことにより、食品の自給体制は大きく減少しました。飢餓により多くの命が奪われ、ほぼ奴隷として扱われる日々が続きました。自らの栽培するコーヒーの味も知らずに、ただただコーヒーの木を栽培していたインドネシア人が、どうしてもコーヒーを飲んでみたいという思いから生まれたのがコピ・ルアクです。
インドネシアの労働者たちが、ジャコウネコの糞の中にそのまま残っているコーヒーの種を見つけたのです。どうしてもコーヒーを混んでみたかったインドネシアの労働者が初めて飲んだコーヒーが薫り高いコピ・ルアクだったのです。
ちなみにインドネシア語で【コピ】はコーヒー、【ルアク】はジャコウネコを意味します。インドネシア語は日本人にとって比較的習得しやすく、とても音がかわいく魅力的です。簡単な単語だけでも学んでみる価値がある言語の一つです。
コピ・ルアクはインドネシアの労働者の飲み物として生まれました。上記からもわかるように豆の収集が非常に手間がかかる嗜好品であり、高価な飲み物です。野生のネコちゃんが好んで食べた果実の排泄物から得られるため、生産性を高めることが困難な食材です。
近年、映画の中でコピ・ルアクが紹介され、世界的に知名度が上がったことで需要が高まりました。そのため、人工的にコピ・ルアクを生産しようとする人たちが出てきました。ジャコウネコを檻の中で飼育し、無理やり果実を食べさせます。これは一時期、動物虐待の観点から問題になっていたため、ご存じの方も多いかもしれません。
コピルアクに似たような香りを付けた偽物のコーヒー豆も販売されており、一般消費者としては判断が難しいことも多いのが現状です。
ただ、本物のコピ・ルアクを生産している正当な生産者を支援するためにも、私たち消費者は知識を持って買い物をしていきたいものですね。
6. フライド・クモ:カンボジア
食品の特徴
フライドクモは、カンボジアのスクン地方の名物料理かつ人気のストリートフードで、小さなクモを揚げたものです。使用されるクモは「a-ping」と呼ばれるタランチュラの一種で、ヒトの手のひら程度の大きさです。クモはタンパク質が豊富な上、美容効果もあると言われています。
よくグロテスクな食事を観光客向けに提供している観光商売がありますが、フライド・クモはその類ではなく、実際に珍味として現地で普及しています。カニやチキンの味に似ていると言われています。とても美味しいものだそうですすが、揚げてあるタランチュラは、死んでいるのだと分かっていても、その姿に恐怖心を抱く人も多いようです。ちなみに体内にある毒は過熱する過程で抜れます。
文化的背景
この料理の起源は、クメール・ルージュ支配下の食糧難時代にさかのぼります。1975年から1979年にかけての共産主義運動ポル・ポト政権の約5年にわたる統治の間、約170万人もの大量虐殺行為が行われました。この政権下で、貧困や飢えが悪化し、人々は生き延びるためにクモやネズミ、トカゲなどを食べ始めました。大量虐殺を逃れるためにジャングルに逃げ込む人たちも多く、そういった人が地面の巣穴を掘り返して食したのがタランチュラでした。
食糧難が終息した後も、タランチュラやサソリなど一部の生き物は味も良く、そのままカンボジア料理の一部として残りました。
フライド・クモが広く人気を集めるようになったのは1990年代後半以降です。現在では森林破壊の影響でクモの生息地が減少したことから価格が高騰しており、カンボジアの市民にとって気軽なスナックでなくなりつつあります。
このような料理が生まれた歴史を知ると、他国の悲痛な歴史を垣間見ることが出来ます。たった50年前まで、大量虐殺という人権を尊重されない行為が行われていたことに心が痛みます。このポルポト派裁判は、国連の協力の下でカンボジア国内に特別法廷が設置され、2022年9月に最高幹部3人が有罪判決を受け、法廷は終結しました。ポルポト政権の独裁政治は異常なもので、忘れ去られてはいけない歴史の一つです。カンボジアの歴史に興味がある方は、キリングフィールド、トゥールスレン(S21) 博物館などを訪れることで、当時の状況をより深く知ることができるでしょう。
7. タラの干物:アイスランド
食品の特徴
アイスランドではタラを干して作った「ハルズフィスクル」が人気です。これは乾燥した魚で、おつまみとして広く愛されています。少しパサついているので、バターを塗って食べられることが多く、バターの油分が絶妙に合うんだそう。ビーフジャーキーではなく、「フィッシュジャーキー」といった雰囲気です。栄養価が高いのも特徴で、100グラム中80%以上がプロテインです。観光のお土産としてもとても人気が高い食品です。
この食材は魚を乾燥させたものであることから、とても堅いことが特徴です。そのため、叩いて柔らかくして食べられるそう。アイスランドを訪問した人がハルズフィスクルを食べた感想を聞かれて「こんなにおいしい木は初めて」と答えたそうです。それくらい堅いのですからびっくりですね。
文化的背景
タラはアイスランドの海域で豊富に獲れるため、その利用法として干物が発展しました。アイスランドの厳しい気候条件下では食品を保存する必要があるからです。
タラの干物の歴史は古く、ヴァイキング時代にさかのぼります。ヴァイキングと聞くと、強奪・殺人のような武装的で怖いイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、実はバイキングは、祖国ノルウェーを追い出された難民です。
870年代に初代統一ノルウェー王ハラルドが権威をふるっていた頃、彼の圧政に耐えかねた人々が海を越えてたどり着いたのが、アイスランドでした。
アイスランドへたどり着いた初めての冬、寒さに耐えきれず家畜が全滅してしまいます。移住者たちは、塩を使わずに魚を保存する方法として、屋外で干す技術を発展させました。アイスランドの厳しい気候条件下で、保存食としての文化が根付いたことが、今日の干物文化につながっています。そのため、タラの干物だけでなくサメ肉など、干物や塩漬けなど保存食がアイルランド料理として有名です。
現代では、アイスランド料理は新しいアプローチを取り入れ始めています。地元のレストランでは、ハルズフィスクルを使った創作料理が提供されることもあり、新しい味わい方が模索されています。また、アイスランドでは生魚を刺身やたたきとして楽しむ文化も根付いており、新鮮なタラやクジラをそのまま味わうことも一般的です。ちなみにクジラは、絶滅危惧種ではないミンククジラという種類が食べられています。
8. スカンク肉:メキシコ
食品の特徴
メキシコでは、スカンク肉が食べられています。スカンクはその独特の臭いで知られていますが、適切な調理法によって臭いを抑えることができます。ただし、肉自体に癖があるため、レモングラスなどのハーブと一緒に調理されたり、匂いを消す工夫をされた調理が多いようです。また、スカンクは狂言病を持っている可能性があり、高温加熱処理を必要とします。
文化的背景
スカンクの肉は、主に貧困層によって食べられるようになりました。スカンク肉を調理する際には、まず毛や皮が剥がされ、Field dressingと呼ばれる方法で適切に内蔵を取り出し、肉を洗浄します。しっぽの横にある袋から強烈なにおいがするため、この袋を上手く取り除く必要があります。その後、水と酢を混ぜたマリネ液に数時間~1晩漬け込み、臭いを軽減し柔らかくします。その後、焼いたり煮たりして調理します。スカンクのタコスなどが売られている地域もあるようです。
スカンク肉はビタミンB群やタンパク質が豊富で、栄養源としても価値があります。
味は他の肉とは比べられないユニークなものだとされ、”スカンク”の味と表現する人が多いようです。私たちには想像もできませんね。
9. ハンギ:ニュージーランド
食品の特徴
ハンギは、ニュージーランドのマオリ族によって約2000年前から引き継がれる歴史ある料理方法です。昔ながらのハンギは、まず、食材をフラックスの葉で包みます。地面に掘った穴の底に焼け石を入れ、その上に食材を入れた籠を置いて調理します。湿らせた布を被せ、穴を土で埋め戻すと、焼け石の熱さが保たれることで調理されます。そのため調理には時間がかかり、約3~5時間かかります。現代ではアルミホイルなどが用いられることがほとんどです。
昔はモア(既に絶滅した巨大な固有種の鳥)、魚、鶏肉、クマラ(サツマイモ)、根菜類が主な材料でしたが、現代では豚肉や羊肉、練り団子なども使用されます。
味付けはされないため、大変なシンプルな味で、やはり蒸し焼きにされる過程があるため、スモーキーな風味がします。
一般的なレストランで食べられることなく、観光客用のマオリショーなどと一緒に提供されています。(これも実は本物のハンギではなく商業用にそれっぽく作られたものです。)
文化的背景
ハンギは単なる調理法ではなく、マオリ文化において深い意味を持ちます。
マオリとは、イギリス入がニュージーランドの土地に入植するより以前から島に住んでいた先住民族です。近代ではニュージーランドのラグビーチームが試合前にハカという伝統舞踊を踊っていることで、マオリ文化を知った人も多いのではないでしょうか。
ハンギは、マオリの伝統的な調理法で、マタリキ(マオリの新年)などの大勢の人々が集う特別な行事で振る舞われます。料理を通じて人々との交流を深め、部族を結束する方法として重要な役割を果たしていました。
昔のマオリの集落では、調理をする場所と人が住む場所を完全に分けており、決まった場所でハンギなどを調理していました。ただ、現在は農薬などによる土の汚染の観点から、商業用でハンギを販売することが許可されていません。
無人の島だったニュージーランドに東ポリネシア系マオリ族が渡ってきたのは約1000年前のことです。遠い島からカヌーに乗ってやってきました。ヨーロッパ人がやって来たのは17世紀頃で、18世紀にイギリスのジェームズ・クックが上陸し、この島をイギリス領だと宣言します。ここから、本格的にヨーロッパ人の移住が始まりました。イギリスは1840年、マオリ人代表者とワイタンギ条約を終結し、島を英国領とする一方で、マオリは自身の土地や文化の継承を約束されるという条約が結ばれました。しかし、マオリ語に訳された条約内容と原文の内容に違いがあり、マオリ族の反感を買うものになりました。そこから、イギリス人とマオリ族の対立や、ヨーロッパ人によってもたらされた伝染病の流行りなどがあり、入植者にとってもマオリ族にとっても良い方向に進みませんでした。
そんな中、ニュージーランドはイギリスの植民地のなかでも独自の地位を築いていきます。1864年にマオリ族に選挙権が認められたり、その後、女性の選挙権も植民地としては早い段階で認められています。
ちなみにニュージーランドの国名は、元々オランダ人によって付けられました。”Zeeland” はオランダの地名で、海の域という意味です。Zeeが海という意味だそうで、Zeelandの地名は島や半島で構成された海の入り混じった地域です。新しいZeelandを海を渡ってみつけたという意味で、ニュージーランドと名づけられました。島は元々マオリ語でアオテアロアと呼ばれており、マオリ語で白く長い雲という意味です。2021年に、国名をアオテアロアに戻すか、アオテアロアニュージーランドに変更するか、今のままか、という国民投票が行われました。約半数がニュージーランドのままを選択し、国名変更はありませんでしたが、ニュージーランドは今でも革新や変更に寛容な国です。2015年にも国旗デザインを変更する国民投票が行われていたり、新しいことへのチャレンジ精神が強い国民性を持っています。開拓者の血がそうさせるのかもしれませんね。
10. 和食:日本
食品の特徴
和食とは、私たち日本の伝統的な料理スタイルであり、新鮮な素材と季節感が重視されます。寿司や天ぷら、おせち料理など多様性に富んでいます。
私たちにとっては日常的な食事ですが、他の文化圏から見ると、非常にユニークな料理であることが分かります。和食は単に料理を楽しむだけでなく、季節感や美意識を表現する芸術の一種とも言えます。2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたことも、その文化的価値を示しています。
文化的背景
和食は日本人特有の美意識や自然観から生まれた芸術です。「栄養バランス」「季節感」「美しさ」「もてなし」の4つの要素から成り立っており、四季折々の素材を活かした料理が特徴です。
和食の歴史は縄文時代から続いていますが、現在の「和食」と呼ばれるスタイルが確立されたのは平安時代以降です。
平安時代には、中国から伝わった調理法や食材が取り入れられ、大饗(だいきょう)料理などの接待形式の料理や行事ごとの料理が発展しました。この時期に禅宗も広まり、肉を避ける精進料理が発展しました。大豆製品や出汁などが重要な役割を果たすようになると同時に、食事は修行の一部であるという考え方も浸透します。その後臨済宗によってもららされた「もてなし」の心が、懐石料理につながっていきます。
日本料理で欠かせないものが寿司ですよね。江戸時代に「江戸前寿司」が誕生し庶民に広がりますが、江戸時代より前からすしはありました。酢は使用されずにご飯は発酵して魚の腐敗を防ぐために使用されており、いわゆるしゃりは食べられていませんでした。漬物のようななイメージに近く、位の高い人の食べ物でした。ここから発酵の時間が短くなり、しゃりも食べられるようになったのが室町の頃。江戸に入り庶民に握り寿司として広まりました。江戸っ子たちは短気であったため、すぐに提供できる寿司スタイルが人気となったそうです。今や「寿司」は日本だけでなく世界中で有名な料理となりました。Washokuがユネスコの無形文化遺産に登録された今、Sushiは和食の看板をしょって世界で活躍してくれているといっても過言ではないでしょう。
食事から見える各国の歴史
これらの食品とその背景には、それぞれ異なる歴史と文化があります。旅行中や留学中にはぜひこれらの料理に挑戦し、その背後にあるストーリーや価値観について考えてみてください。食べ物を通じて異文化理解を深められるのは、とても楽しく有意義なことです。料理には、その土地ならではの魅力と教訓があるものです。新しく触れる文化のルーツを調べることで、短い滞在であっても、深い理解が得られ、より充実した体験ができるでしょう。留学で少し寂しくなった時、慣れない新しい文化の歴史を調べてみてください。きっとその文化への愛着が深まることでしょう。
Categorised in: 留学コラム